動作直後(~たところ、~たばかり)の用法
動作直後を表す文型に「~たところ」と「~たばかり」の2つがあります。
①私は晩ごはんを食べたところです。
②私は晩ごはんを食べたばかりです。
①、②のどちらも、晩ごはんを食べた直後であることを表しています。「私は晩ごはんを食べました。」はただ晩ごはんを食べた事実だけを表していますが、「私は晩ごはんを食べたところです」「私は晩ごはんを食べたばかりです」は晩ごはんを食べた直後であることを強調しています。
「~たところ」と「~たばかり」の小さな違いは
「~たところ」は「その動作がたった今終了したこと」に焦点が置かれている
「~たばかり」は「その動作が終了して、あまり時間が経っていないこと」に焦点が置かれている
この点から鑑みると、「~たところ」のほうが「~たばかり」より、より動作直後であると言えます。
「~たところ」と「~たばかり」は小さな違いだけではなく、大きな違いもあります。
A:今晩一緒に晩ごはんを食べに行きませんか。
B:いいですね。何を食べますか。
A:日本料理はどうですか。
B:①昨日日本料理を食べたところなので、日本料理はちょっと。×
B:②昨日日本料理を食べたばかりなので、日本料理はちょっと。〇
この場合①は非文になり、②は正しい文になります。これが大きな違いです。
「~たところ」はその動作がたった今終了したことに焦点が置かれているため、動作をしてから時間が経過している場合には使うことができません。そのため、過去の日時と合わせて使うことができないのです。
一方、「~たばかり」はその動作が終了して、あまり時間が経っていないことに焦点が置かれているため、動作の直後だけではなく、話し手がその動作をしてからあまり時間が経過していないと感じれば、「~たばかりです」を使うことができます。
先ほどの例文は昨日でしたが、これが更に前でも、話し手がその動作をしてからあまり時間が経過していないと感じれば、「~たばかり」を使うことができます。
①私は去年の9月に日本語の勉強を始めたところなので、日本語がまだ下手です。×
②私は去年の9月に日本語の勉強を始めたばかりなので、日本語がまだ下手です。〇
上の例文は日本語の勉強を始めたのは4か月前なのですが、話し手にとっては日本語の勉強を始めてからまだあまり長い時間が経過していないと感じているため、②では「~たばかり」を使うことができるのです。
ただ、「~たばかり」がどれぐらい前まで使えるのかは微妙なのですが。
2年生が「私は1年前に日本語の勉強を始めたばかりなので、日本語がまだ下手です。」と言った場合は、まだ許容範囲内だと思うのですが、4年生が「私は4年前に日本語の勉強を始めたばかりなので、日本語がまだ下手です。」と言った場合はどうか。その学生に対して、「4年も日本語を勉強して、まだ下手なのか」とツッコミたくなってしまいますが(笑)
もう1つ「~たところ」と「~たばかり」には大きな違いがあります。
それは「~たところ」は後ろの名詞を修飾することはできませんが、「~たばかり」は後ろの名詞を修飾することができることです。
私はもらったところのお年玉を全部使ってしまいました。×
私はもらったばかりのお年玉を全部使ってしまいました。〇
この理由も「~たところ」は動作がたった今終了したことに焦点が置かれているため、「もらったところのお年玉」としてしまうと、もらった直後(1秒後)に全部使ってしまったという意味になってしまうからだと思われます。それは現実的には不可能です。あるいは「ところ」が場所の「ところ」とかぶってしまうため、聞き手に誤解を与えてしまう恐れがあるからなのかもしれません。
このように「~たばかり」は使える時間的な範囲が広く、自由自在に使える万能な文型ですので、実際の授業では使い間違いを防ぐためにも、「~たばかり」だけを教えれば良いと思います(笑)
日本語教師が一番深く考えて、頭を悩ませなければならないのはこの文型が実際の日常生活のどんな場面でよく使われるかです。
「~たばかり」を使った文型練習
私はこの文型は誘いやお願いを断るときに使われることが多いのではないかと思っていますので、この文型を使って会話練習あるいはロールプレイさせる場合は誘いやお願いを断る練習をさせています。
A:これから先生の寮に行きませんか。
B:昨日先生の寮に行ったばかりなので、ちょっと。実はもう先生と話すネタがないんです。
A:その漫画を貸してくれませんか。
B:この漫画は買ったばかりで、まだ読んでいないんです。読み終わってからでもいいですか。
A:私と付き合ってくれませんか。
B:あなたとは知り合ったばかりで、あなたのことがまだよくわからないので、今はまだ付き合うことはできません。ごめんなさい。
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