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「に」(教材面)昔話の読解教材

昔話の読解教材① 『鶴の恩返し』

「に」(教材面)
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中国の大学の日本人教師は読解の授業を担当することも多いです。

 

昔話の読解教材

 

読解の教科書は1年生後半の学生や2年生前半の学生には難し過ぎるものが多いです。そのような場合は教えるのも難しくなりますし、また、学生も興味を持ってくれず、困ってしまいます。

 

そのようなときにお勧めなのが昔話です。なぜなら、昔話は話も分かりやすく、ストーリーも面白いからです。

 

私はよくデジタル絵本サイトに掲載されている昔話を読解教材として使っています。こちらのサイトは日本の昔話だけではなく、世界の昔話なども掲載されています。また、絵本のサイトですので、絵もあり、まるで紙芝居のような感じになっています。  

 

鶴の恩返し

 

昔、昔、あるところに、貧しいお爺さんとお婆さんがいました。ある寒い雪の日、お爺さんが町へ薪を売りに行きました。その帰り道、お爺さんは、罠に掛かって、苦しんでいる鶴を見つけました。お爺さんは、すぐ鶴を助けてあげました。

 

何日かした雪の夜、お爺さんの家の戸をトントンと叩く音がしました。お爺さんが戸を開けてみると、一人の娘が立っていました。娘は「雪で道に迷ってしまいました。どうか一晩泊めてください」と言いました。それを聞いたお爺さんは、「それは大変でしたね。さあ、中に入って、ゆっくり休んでください」と言いました。その日から、娘は、お爺さんの家で、暮らすようになりました

 

ある日、娘は「お爺さん、お婆さん、私に機を織らせてください。でも、どうか私が機を織るところは、絶対に見ないでください」と言いました。お爺さんとお婆さんは、娘に機を織らせてあげました。「とんとんからり とんからり とんとんからり とんからり」、娘は朝早くから、夜遅くまで、部屋の戸を閉め切って、機を織りました。

 

そして、何日かした後、娘は一反の布を持って、部屋から出て来ました。その布は、とてもとても美しい布でした。娘は「お爺さん、これを町へ持って行って、売って来てください。きっとたくさんお金がもらえますよ」と言いました。お爺さんが、町へその布を持って行って、売ると、とても高く売れました。喜んだお爺さんとお婆さんは、娘に「また布を織ってください」と頼みました。

 

数日後、娘は疲れた顔をして、部屋から出て来ました。そして、お爺さんとお婆さんに「この布が最後ですよ」と言いました。しかし、布を高く売ったお爺さんとお婆さんは、またまた娘に「布を織ってください」と頼みました。娘は「本当にこれが最後の最後ですよ」と言って、「とんとんからり とんからり とんとんからり とんからり」と、機を織り始めました。

 

お爺さんとお婆さんは、娘の機を織る音を聞きながら、「どうしてこんなに美しい布を織れるのだろう。ちょっと覗いてみたい」と思いました。お爺さんとお婆さんは、「娘が絶対に見ないでください」と言ったのを忘れて、部屋を覗きました。すると、一羽の鶴が自分の羽を抜いて、機を織っていました。お爺さんとお婆さんは、驚いて、戸を閉めました。

 

次の日、娘は一反の布を持って、部屋から出て来ました。娘は「お爺さん、お婆さん、絶対に見ないでくださいと言ったのに、私の姿を見てしまいましたね。私はお爺さんに助けられた鶴です。でも、姿を見られたので、もう一緒に暮らすことはできません。どうかお爺さん、お婆さん、お元気で」と言うと、娘は鶴の姿に戻りました。しかし、鶴は、あちこちの羽がありませんでした。そして、鶴は、遠くへ飛んで行きました。

 

単語

恩返し 貧しい 薪 売る 罠に掛かる 助ける 叩く 道に迷う どうか 泊める 機を織る 閉め切る 一反 頼む 覗く 抜く あちこち

 

文法

名詞+がします 動詞(て形)+てみます 動詞(辞書形)+ようになりました

 

昔話の読解教材の授業の流れ

 

この『鶴の恩返し』は、先ほど紹介したサイトの昔話のうちの1つです。難しい単語や文法があったときは簡単な単語や文法に変えています。

 

授業の流れは、


①単語の説明 ②文法の説明 ③内容確認の質問 ④感想を述べてもらう

 

です。

 

①単語の説明

 

貧しい(先生は貧しいです) 薪(薪を割ります)

 

単語の説明をするときはできるだけわかりやすい例文を提示するようにしています。また、単語の説明をするときも学生とやり取りをしながら、行っています。例えば、「薪は何に使いますか」などのようにです。

 

②文法の説明

 

動詞(て形)+てみます(今度、その店のコーヒーを飲んでみます) 

動詞(辞書形)+ようになりました(私は料理を作るようになりました)    

 

文法の説明をする時もできるだけわかりやすい例文を提示するようにしています。例文を提示した後は、学生に文を作ってもらい、その文法を理解できたかどうかを確かめています。

 

文を自分で作るのが難しい学生に対しては前文を与えたり、ヒントを出したりしながら、文を作らせています。例えば、「○○の映画面白かったですよ。じゃ、今度、その映画を? ○○てみます」、「私は彼女ができました。ですから、私は? ○○ようになりました」などのようにです。   

 

③内容確認の質問 

 

すべての単語と文法を説明した後は1段落ごとに、文を読み、昔話の内容を理解できているかどうかを確かめるための質問をしています。

 

例えば、「ある寒い日の夜、お爺さんはどこへ何をしに行きましたか。それはどうしてですか。」、「お爺さんは帰り道、何を見つけましたか。それで、お爺さんはどうしましたか。○○さんだったら、どうしますか。」などのような質問です。


私はいつも質問を口頭で言って、答えてもらっていますが、学生の聴解力が弱く、聞き取りが難しいようであれば、すべての質問を印刷したものを学生に配って、書いてもらう方法が良いと思います。

 

また、質問は想像力を鍛えるために、物語には書いていないことも入れるようにしています。例えば、「お爺さんはどうして薪を売りに行ったと思いますか」などのような質問です。物語には薪を売りに行った理由は書かれていませんので、どうしてかを考えさせることができます。

 

また、「鶴が怪我をしていました。○○さんだったら、どうしますか」などのような、自分だったら、この状況ではどうするかのような質問も入れるようにしています。

 

④感想を述べてもらう

 

全段落の内容確認の質問がすべて終わったら、学生に昔話の感想を自由に述べてもらっています。

 

また、時間が余ったときは紙を見ずに、自分の言葉で、昔話の内容を話してもらっています。ただ、1人ですべての内容を話すのはとても大変ですので、交代交代で、少しずつ順番に話してもらうようにしています。

 

交代交代で順番で話してもらうと、昔話の内容が突然変わったりして、面白い展開が起き、笑いが起きる時もあります。

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