連濁
連濁は「2つの語が結びついて1つの語になるときに後ろの語の語頭が濁音化する現象」です。
「青空」や「花火」などの連濁の語彙を導入するとき、よく学生から『なぜ「あおそら」「はなひ」ではなく、「あおぞら」「はなび」になるんですか』と質問されます。
日本語教師なら、すぐに答えられますが、日本語教育に携わったことがない方にとってはこのように質問されたら、きっと返答に窮するのではないかと思います。
連濁が起きる理由
青(あお)+空(そら)=青空(あおぞら)
花(はな)+火(ひ)=花火(はなび)
連濁が起きる理由は2つあります。
1つ目の理由は発音しやすくするためです。
もし青空(あおぞら aozora)を青空(あおそら aosora) と発音した場合、母音(有声音)の「o」と「o」の間に無声子音の「s」が挟まれることになってしまいます。
有声音は声帯の振動を伴って発せられる音です。一方、 無声音は声帯の振動を伴わないで発せられる音です。
無声子音を有声子音化するために作られたものが濁音です。「か行、さ行、た行、は行、ぱ行」の子音が無声子音ですので、それに対する「が行、ざ行、だ行、ば行」が有声子音になります。
つまり、連濁は濁音化する現象ですので、後ろの語の語頭が「か行、さ行、た行、は行、ぱ行」のときに起こります。
連濁が起きる理由ですが、有声音と有声音の間に無声音が入ると、声帯の振動の問題が起きるため、どうしても発音しづらくなってしまいます。そこで、発音しやすくするために、無声音を有声音に変える連濁が起こります。つまり、有声音+有声音+有声音にすることによって、声帯の振動を止めることなく、発音がスムーズにできるようになります。
2つ目の理由は1つの単語であることを強調するためです。
連濁が起きやすいのは後ろの語が和語のときです。たとえば、本棚(ほんだな)や鼻声(はなごえ)などです。一方、後ろの語が漢語や外来語のときは連濁は起きにくいです。たとえば、ギネス記録(ギネスきろく)やビーフカレー(ビーフカレー)などです。
和語に連濁が起きやすい理由は和語には濁音から始まる語がないからです。そのため、後ろの語の和語が連濁したとしても、濁音化によって意味が変わってしまうことはありません。なぜなら、もともと語頭が濁音で始まる語がないからです。
むしろ濁音化することによって、2つの語が1つの語であることを強調することができます。つまり、連濁することによって、2つの語の結びつきを強め、1つの単語であるように認識させることができるのです。
一方、漢語や外来語には濁音から始まる語がたくさんあります。たとえば、「外国」や「ベット」などです。漢語や外来語が連濁しにく理由は漢語や外来語は濁音から始まる語が多いため、無声音である子音まで濁音化してしまうと、濁音から始まる語とかぶってしまうおそれがあり、意味を変えてしまうこともあるためだと思われます。
和語の濁音化に関しても、実際いくつかの例外があります。語頭以外に濁音がある場合は連濁は起きません。例えば、春風(はるかぜ)や紙屑(かみくず)などです。春風(はるがぜ)や紙屑(かみぐず)とは言いません。この理由はおそらく濁音が2回続くと発音しにくいからだと思われます。
また、前の語も後ろの語も和語で、それらが並列関係にある場合も連濁は起きません。例えば、白黒(しろくろ)や飲み食い(のみくい)などです。白黒(しろぐろ)や飲み食い(のみぐい)とは言いません。この理由はおそらく1つの語であることを強調するのではなく、並列の語であることを強調したいために、連濁が起きないのだと思われます。
日本語教師は日本人なら誰でもできると思われていますが、実際はけっして誰にでもできるものではありません。日本語を外国語として教えるためにはやはりこのようにそれなりの知識が必要になると同時に、学生にわかりやすく説明する技術も必要になります。
