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文型の使い分け日本語文型

「山に登る」と「山を登る」の違い

文型の使い分け
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「山に登る」と「山を登る」の違い

 

学生からよく「山に登る」と「山を登る」の違いについて質問されます。

 

この違いを簡単に分かりやすく説明するのは日本語教師にとっても骨が折れます。

 

①山に登る。

②山を登る。

 

①の格助詞「に」は「図書館に行く」と同じく、「移動の到着点」を表しています。

 

②の格助詞「を」は「横断歩道を渡る」と同じく、「移動の通過点」を表しています。

 

「登る」は自動詞ですので、他動詞のように目的語(対象)を表す格助詞「を」は取れません。「登る」は移動を伴う動詞ですので、この格助詞「を」は対象ではなく、移動の場所を表しています。

 

「登る」は「上る」とも書きますので、③と④の例文を考えれば、違いがよくわかります。

 

③階段に上る×

④階段を上る〇

 

③は非文になってしまいます。なぜなら、格助詞「に」は移動の到着点、つまり最終目的地を表すからです。そのため、最終目的地が階段というのはおかしくなるため、非文になります。家の階段であれば、やはり最終目的地は2階になるはずです。

 

④は移動の通過点ですので、正しい文になります。これは「階段を上って、2階の部屋に行く」という文を作ってみるとよくわかります。階段はあくまで移動の通過点であり、最終目的地は2階の部屋です。

 

「登る」の反対語は「下りる」なので、⑤と⑥の例文を考えても、違いがよくわかります。

 

⑤山に下りる×

山を下りる〇

 

⑤は格助詞「に」を使っていますので、移動の到着点、つまり最終目的地を表しています。そのため、山にいる場合、山にいるのに、山に下りるという感じになってしまうため、非文になります。ただ、「雲の上にいた神様が山に下りる」という文の場合は正しい文になります。なぜなら、最終目的地が山になるからです。あるいは、「山の麓に下りる」というように山の部分に最終目的地を設定すれば、正しい文になります。

 

⑥は格助詞「を」を使っていますから、正しい文になります。なぜなら、山が移動の通過点になっているからです。

 

また、長い文にすると、違いがよくわかります。

 

⑦あの山に登って、朝日を見る。

⑧あの山を登って、谷を越えて、故郷に帰る。

 

⑦の文は格助詞「に」を使っていますので、移動の到着点を表しています。つまり、到着点は最終目的地を表しますので、この文の場合、最終目的地は朝日を見るための「頂上」ということになります。

 

⑧の文は格助詞「を」使っていますので、移動の通過点を表しています。つまり、山の頂上が最終目的地ではなく、山や谷はあくまでも移動の通過点であり、最終目的地は格助詞「に」を伴っている故郷になります。

 

⑨あの山に登って、朝日を見る。〇

 あの山を登って、朝日を見る。×

⑩あの山に登って、谷を越えて、故郷に帰ります。×

 あの山を登って、谷を越えて、故郷に帰ります。〇

 

学生に説明するときは⑨と⑩のように例文を比較して、説明すると、学生たちはとても分かりやすいようです。

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