不可避(~ずにはいられない ~ざるを得ない)の使い分け
不可避を表す文型に「~ずにはいられない」と「~ざるを得ない」があります。この2つの文型は似て非なるため、学生はよく使い方を間違えてしまいます。
①私の日本語はとても上手になったので、先生に感謝せずにはいられないです。〇
②私の日本語はとても上手になったので、先生に感謝せざるを得ないです。×
「〜ずにはいられない」は「その行為をしたいという感情をどうしても抑えることができない」という話者の気持ちを表します。ですから、①の文には「私の日本語が上手になったのは先生のおかげなので、どうしても先生に感謝したい」という話者の抑えられない気持ちが表れています。
「~ざるを得ない」は「本来はその行為はしたくないが、ある理由からどうしてもその行為をしなければならない」という話者の気持ちを表します。ですから、②の文は「私の日本語が上手になったのは自分の努力のおかげだけど、先生の面子を保つために、仕方なく先生に感謝しなければならない」という話者の嫌な気持ちが表れてしまうため、非文になります。
①学生とカラオケに来たので、日本の歌を歌わずにはいられないです。〇
②学生とカラオケに来たので、日本の歌を歌わざるを得ないです。〇
①の文と②の文は日本の歌を歌うのが不可避であることは共通していますが、その意味は大きく違います。ですから、この2つは似て非なる文型なのです。
①の文は「学生に日本の歌の素晴らしさを伝えたいので、どうしても日本の歌を歌いたい気持ちが抑えられない」という話者の気持ちを表していますが、②の文は「本来は歌が苦手なので学生の前で歌いたくはないが、しかし、せっかく学生がカラオケに誘ってくれたのに、歌わないのは学生に対して失礼であるので、どうしても日本の歌を歌わないわけにはいかない」という話者の追い詰められた気持ちを表しています。
①調査結果から、「ファーストフードは健康に悪い」と言わずにはいられないです。×
②調査結果から、「ファーストフードは健康に悪い」と言わざるを得ないです。〇
「~ずにはいられない」は感情的なものなので、主観的な不可避の表現であると言えます。一方、「~ざるを得ない」は感情的ではなく、ある理由から導き出された結論なので、客観的な不可避の表現であると言えます。ですから、飲食業界の方が調査結果を述べる場合は「~ざるを得ない」を使ったほうがしっくりきます。
「~ずにはいられない」と「~ざるを得ない」の文型練習
この文型を練習するときも、前文を与えて、後文を作ってもらうと良いです。
「~ずにはいられない」
今日は暑い(寒い)ので、~。
デパートへ行くと、~。
ストレスがたまっているので、~。
彼氏(彼女)とデートをするとき、
美女(イケメン)を見ると、~。
「~ざるを得ない」
明日はテストがあるので、~。
風邪が治らないので、~。
バスが来ないので、~。
お金がないので、~。
好きな人に恋人がいるので、~。
文を作るのに慣れてきたら、全文を作ってもらうと良いです。
「中国へなかなか戻れないので、習近平国家主席に早く中国へ戻れるように直訴せずにはいられないです。」
「中国へなかなか戻れないので、習近平国家主席に早く中国へ戻れるように直訴せざるを得ないです。」
全人代で外国人への入国規制の完全解除が満場一致で可決されることを願うばかりです。
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