材料の「で」と原料の「から」の違い
材料の「で」と原料の「から」の違いについても、学生からよく質問されます。
①木で椅子を作ります。
②木から椅子を作ります。
材料を表す格助詞の「で」は材料から出来上がった物への変化が少ない場合に使われます。つまり、出来上がった物が何の材料からできているのか推測するのが容易である場合に使われます。
一方、原料を表す格助詞の「から」は原料から出来上がった物への変化が大きい場合に使われます。つまり、出来上がった物が何の原料からできているのか推測するのが難しい場合に使われます。
ですから、①の文と②の文の場合は①の文を使ったほうがしっくりきます。
③日本酒は米で作られる
④日本酒は米から作られる
③の文と④の文の場合は④の文のほうがしっくりきます。なぜなら、原料から出来上がった物への変化(個体の米がいろいろと手を加えられた結果、液体の日本酒になる)が大きく、出来上がった物が何の原料からできているのか推測するのが難しいからからです。実際中国の学生の中にも日本酒の原料が米であると知らない学生もいます。
以前、カカオ農園で働き続ける兄弟の動画を紹介したのですが、この兄弟もカカオで何が作られるのか、カカオから何が作られるのか知りませんでした。
格助詞の「から」は起点の用法(日本から中国へ行く)の作用が強いため、原料の「から」もその起点の用法の影響を受け、その結果、原料を起点とする変化の過程が重視されるようになったのではないかと思われます。
⑤段ボールでベットを作る。
⑥段ボールからベットを作る。
⑤の文のベットは個人が段ボールで作った場合はしっくりきます。格助詞の「で」は道具、手段・方法の用法(箸でスパゲティを食べる)もあるので、段ボールが材料であると同時に、手段・方法のアイディアの1つのようにも感じられます。
⑥は東京オリンピックで使われた企業が段ボールから作ったベットの場合はしっくりくるのではないかと思います。
なぜなら、この素晴らしいベットがまさか段ボールからでできているとは誰しも思わないと思うからです(笑)
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