あるある探検隊ではありませんが、私の日本語教師あるある①を紹介したいと思います。日本語教師あるあるはまさしく日本語教師の職業病というやつです。
言葉の語源を知りたくなる
このあるあるは本を読んでいたり、テレビを見ていたりしたときに、無意識に脳に現れます。そして、その結果、手も無意識にググってしまいます(笑)
私は学生時代、成績がクラスでよく「ビリ」だったのですが、皆さんはなぜ最下位のことを「ビリ」というのかご存じでしょうか。
実は「ビリ」の語源は「尻」から来ています。「頭隠して尻隠さず」という諺からも分かるように、昔から頭は先頭として、尻は後尾として形容されています。
なぜ「しり」が「びり」という言い方になってしまったかと言いますと、「尻」と同義で使う言葉に「尾」がありますが、この「尾」の音読みである「び」と混ざって、いつの間にか「しり」が「びり」という言い方になってしまったようです。おそらく「尻尾」という言葉が庶民を混乱させてしまったのでしょう(笑)
「ビリ」という言い方のほかに、「ビリケツ」という言い方もありますが、これは「ビリ」に「ケツ」ですから、ビリを更に強調した言葉であることが一目瞭然で分かります。
それから、私は学生時代よく「カツアゲ」もされていたのですが、「カツアゲ」の語源をご存じでしょうか。
「カツアゲ」と聞くと、なんだか美味しそうな感じがしてしまいますが。私は「カツアゲ」の語源はカツを油で揚げるように、相手を痛めつけるからだと思っていたのですが、実は「カツアゲ」の語源はヤクザや不良が用いた隠語から来ていました。
「カツアゲ」を漢字で書くと、「喝上げ」なのですが、「カツ」は「恐喝」の「喝」から、「アゲ」は「巻き上げる」の「上げる」から来ています。つまり、恐喝して、お金を巻き上げるから「カツアゲ」と言うのです。
この漢字が使われている理由が知りたくなる
それから、言葉の語源だけではなく、なぜこの漢字が使われるようになったのかについても知りたくなってしまうときがあります。
例えば、「刺身」と「名刺」です。皆さんはなぜ「刺身」は「刺す身」なのか、なぜ「名刺」は「名紙」ではなく、「名刺」なのかご存じでしょうか。
学生にこのクイズを出すと、刺身については「昔は魚を竿で釣るのではなく、銛で刺して釣っていたから」とか「刺身を食べると、ワサビの味が舌を刺すから」とか、名刺については「相手に自分の名前を紹介して、相手の心に自分の名前を突き刺すから」とかの解答が出てくるのですが、どれも不正解なのですが。
「刺身」については昔は魚を切るとき、菜箸のような長い箸を魚に刺して固定し、包丁で魚を切っていたから、「刺す身」ということで、「刺す」という漢字が使われています。
長い箸を刺す理由は昔は食べる前に、よく神様に捧げていたので、人間の汚い手で触った魚を神様に捧げるのは失礼だと考えられていたからと、直接手で魚に触れると、人間の体温が魚に伝わってしまうため、魚の鮮度が損なわれてしまうからです。
一方、「名刺」については名刺が発祥した中国の唐の時代が関係しています。現在は名刺は相手に直接渡して使われていますが、当時はそういう使い方ではなく、訪問した家が不在のときに、訪問したことを知らせるために、木や竹で作った札に自分の名前を書き、戸口に刺して使われていました。今の時代でいう不在票みたいな役割でしょうか。そのため、名刺は「紙」ではなく、「刺」という漢字が使われています。
中国語では名刺は「名片」と言いますので、その当時の名残を感じることができませんが、日本語の「名刺」という漢字の中に中国のかつての風習が残っていますので、その当時の名残を感じることができます。
日本のこういう昔の名残をも大切にする温故知新的なところが日本の良さだと思います。それは和洋折衷という言葉からもわかります。
私は語源を調べた後はそれをメモして、授業のウォーミングアップのクイズとして、学生に出題しています。これこそがまさしく職業病なのかもしれませんが(笑)
こういう語源の意味までを知っておくと、その言葉が記憶に残りやすくなりますので、単語を導入するとき、学生に語源についても話すと効果倍増です。
また、日本語の中には中国の故事成語も多いですので、学生にそれを説明させるのも良いと思います。例えば、「温故知新」とか「画竜点睛」などなどです。
中国で生まれた故事成語ですから、学生は一生懸命熱く説明してくれます。学生にこのような説明する力を付けさせてあげるのも、日本語教師の大きな役割の1つだと勝手に思っています。
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