付帯状況(AたままB)
付帯状況を表す文法に「AたままB」があります。「AたままB」は「Aをした結果の状態が何も変化せずに続いている中で、Bをすること」を表します。
①私は立ちながら、ご飯を食べています。△
②私は立ったまま、ご飯を食べています。〇
①は「AながらB」を使っていますので、2つの動作を同時に行う同時進行を表しています。そのため、立つ動作と食べる動作を同時に行っているような意味合いになるので、やや不自然さがあります。ですから、「AながらB」は「立つ」のような瞬間動詞とは結び付きにくいと言えます。なぜなら、立つ動作は一瞬で終わってしまうため、動作をそれ以上進行させることができないからです。
②は「AたままB」を使っていますので、立ったという結果の状態が続いている中で、食べる動作を行っているという意味合いになるので、不自然さは感じられません。ですから、「AたままB」は結果の状態を表す瞬間動詞とは結びつきやすく、結果の状態ではない動作性動詞とは結び付きにくいと言えます。
①私は目を開けながら、寝てしまいました。△
②私は目を開けたまま、寝てしまいました。〇
この①②の文も瞬間動詞か否かが関係しているため、①の文はやや不自然さをあります。また、なんだか意識的なものが感じられます。その理由は「AながらB」は同時動作に視点があるので、目を開ける動作そのものに重点が置かれるため、意識的なものを感じてしまうのだと思われます。ですから、多くの人が「自分の意識で目を見開いて、寝た」と感じるのではないかと思います。
一方、②の文は「AたままB」を使っていますので、動作の結果の状態が変わらずに続いていることに視点があるため、意識的に目を開けているのではなく、自然的に目を開けているように感じられます。それは「まま」に自然のなりゆきに任せてという用法(例 思うままに生きる)があるため、無意識的に感じさせるのかもしれません。
「AたままB」はAが瞬間動詞であったとしても、どんな文にも使えるわけではありません。
①私はパンツを穿いたまま、お風呂に入ってしまいました。〇
②私はパンツを穿いたまま、学校へ行ってしまいました。△
①は正しい文ですが、②は不自然な文です。なぜなら、「AたままB」は非日常的なことにしか使えないからです。つまり、当たり前のことには使えないのです。一般的にはお風呂に入るときは、パンツは穿きませんので、パンツを穿いてお風呂に入ることは非日常的なこと、つまり当たり前ではないことになりますので、①の文は正しい文になります。ちなみに、この例文は先日、男性が女装をして、パンツを穿いたまま女湯に入った事件を思い出して作りました(笑)
②の文が不自然なのは「パンツを穿くこと」と「学校へ行くこと」が当たり前の組み合わせになっているからです。ただ、普段ノーパンで学校へ行っている人がその日に限って、パンツを穿いて学校へ行った場合は正しい文に変身してしまうのですが(笑)
また、この文を「私はパンツを穿かないまま、学校へ行ってしまいました。」にすれば、正しい文になります。なぜなら、パンツを穿かないで学校へ行くことは非日常的なこと、つまり当たり前ではないことになるからです。
経験を表す「~たことがある」も当たり前のことには使うことができません。
私は自転車に乗ったことがあります。△
その理由は自転車に乗った経験はごくごく有り触れた月並みの経験なので、それが経験とはみなされないからです。
私はベンツが作った自転車に乗ったことがあります。〇
私は高速道路で自転車に乗ったことがあります。〇
ただ、こうすれば、有り触れた月並みなことではなくなるため、経験になり、正しい文になります。
①彼は泣きながら、謝りました。〇
②彼は泣いたまま、謝りました。〇
①の文の「AながらB」は二つの動作の同時進行というよりも、Bの動作(謝る)が行なわれるときの主体(彼)の様子をA(泣く)が表しています。つまり、この「AながらB」は付帯状況の用法であり、彼が謝るときに、泣くという状況が付帯されています。
②の「AたままB」はA(泣く)の動作をした後、その状態が続いて、B(謝る)の動作が行われたことを表していますが、なんだか話者の呆れみたいなものを感じます。その理由は人に謝るときは泣いて謝るべきではありませんので、話者はその状態に非日常性を感じたとともに、彼が泣く状態を変えようとしなかったことを否定的に捉えているためなのではないかと思います。
「AたままB」の文型練習
この文型の練習をするときも、前文を与えて、後文を作ってもらうと良いです。
電気を付けたまま、~
お風呂に入ったまま、~
眼鏡を掛けたまま、~
靴を履いたまま、
携帯電話を机に置いたまま、~
酔っ払ったまま、~
お金を借りたまま、~
化粧をしないまま、~
復習をしないまま、~
鍵を掛けないまま、~
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