条件節の「と」と「たら」の使い分け
条件節の「と」と「たら」の使い分けについても、学生からよく質問されます。なぜなら、「と」と「たら」の両方が使える場合、「と」だけ使える場合、「たら」だけ使える場合があるためです。
①夏になると、ビアガーデンに行く。
②夏になったら、ビアガーデンに行く。
①の文は条件節に「と」を使い、②の文は条件節に「たら」を使っています。この文の場合は「と」と「たら」の両方が使えます。しかし、意味に違いがあります。
「と」は反復的な因果関係を表すため、1回限りの事柄には使うことができません。そのため、①の文は「(毎年)夏になると、ビアガーデンに行く」というような反復的な習慣を述べています。
一方、「たら」は反復的な因果関係は表さないため、1回限りの事柄にしか使えません。そのため、②の文は「(今年の)夏になったら、ビアガーデンに行く。」という1回限りの事柄を述べています。この文は反復的な習慣は表していませんので、もしかすると今年の夏に生まれて初めてビアガーデンに行くことも考えられます。
③彼女に会うと、緊張する。
④彼女に会ったら、緊張する。
「と」と「たら」にはこのような違いがあるため、③の文は彼女に何回も会っているというニュアンスが、④の文はまだ彼女に会っておらず、もし1度彼女に会ったらというニュアンスが感じられます。
なぜなら、「と」はいつもその事態が起こるという一般条件で使われ、「たら」は実際に起こるか起こらないかわからない仮定条件で使われることが多いからです。逆に言えば、「と」は必然性があり、実際に起こるか起こらないかわからない仮定条件には使われないということです。
⑤1に1を足すと、2になる。 〇
⑥1に1を足したら、2になる。 ×
⑤と⑥の文では⑤の文のほうがしっくりきます。なぜなら、いつもそうなるという必然性があるからです。
⑦招聘状が出ると、中国へ行く。×
⑧招聘状が出たら、中国へ行く。〇
⑦と⑧の文では⑧の文のほうがしっくりきます。なぜなら、実際に招聘状が出るか出ないかはわからないからです。
また、条件節の「と」は主節に意志表現は取れませんが、条件節の「たら」は主節に意志表現を取ることができます。条件節の「と」が主節に意志表現が取れない理由は必ず起こることは意志とは無関係だからだと思われます。
ただ、⑦の文を「招聘状が出ると、中国へ行ける。」と可能形に変えると、正しい文になります。なぜなら、可能形は意志表現ではないからです。可能形は動作を表すのではなく、状態や性質を述べるものです。つまり、この文は中国へ行くという意志を述べているのでなく、中国へ行くことができるという状態や性質を述べています。
①夏になると、ビアガーデンに行く。
②夏になったら、ビアガーデンに行く。
①の文は「夏になると、ビアガーデンに行く」と意志表現を取っていますが、しかしながら、これは習慣になりますので、無意志表現になります。なぜなら、習慣は意志とは無関係に起きるものだからです。
③彼女に会うと、緊張する。
④彼女に会ったら、緊張する。
また、「緊張する」も意志ではなく、無意志で起きるものです。わざわざ自分の意志で緊張しようと思う人はいないと思います。もしそんな人がいたら、相当の変わり者でしょう(笑)
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